ホールスタッフとして、お客様からお声を掛けやすい雰囲気を創っていくことは、とても大切なことなのです。お風呂に入る、手を洗う、鼻毛を切るなどは当然のことです。繰り返しになりますが、お客様から見て、“感じが良い”と判断していただけることがポイントです。その清潔感という抽象的な概念を、全員が同じように理解する為に、「身嗜みの基準」が必要になってきます。
私は個人的に、髪の毛の色や、指輪の本数などはできる限り自由にすればよいのではと考えています。髪留めの色が赤になったところで、そのスタッフの笑顔が半減するわけではありません。スタッフの個性を存分に発揮し、その日自分が気持ち良く働けるように暗示をかけたコスチュームを身にまとえばよいと考えてはいるのですが、実際にそのような基準(個人の自由にまかせる)で取り組んだ店舗で、清潔感ある身嗜みが徹底されている事例にお目にかかったことがないのです。理由は、明白です。「清潔感」の認識の違いから、“暴走するスタッフ”がでてくるからです。
お店のスタッフからはよくこんなことを言われます。「身嗜みについてうちの店は、とても厳しいと思います。ネックレスや、マニキュアはどうしてダメなんですか?なんだか納得できないんですよね。お客様がそれで不快に感じることはないですよ。基準がない方がいいとは思わないけど。どうなんですか?」というものです。
というかつての私も同様のことを上司に言っていたような覚えがあります。前述の質問を受けた時、私は以下のように説明しています。(あえて会話調になっていることはご了承ください)
「基準そのものをどこで線引きするのかについては、難しいよね。あなたの言っていることは、まさにこの点で、どうしてそこで線引きするのですか?ってことだよね。身嗜みの基準とは、清潔感というキーワードをおさえながら、マネジメントサイドの好みで決めていることが多いのは事実だよ。お店のイメージにあわせた一つの演出なんだから、その点については理解をしなければならないと思う。私は基本的に個性を存分に出しても良いという意見には賛成。でも、そうすると個性を履き違えて、別の方向へ突き進んでいく人がでてくるから困ってしまう。だって、基準がないと互いに判断が曖昧になるし、自分なりに勝手な解釈をする人がでてくるでしょ?基準を設けることで、双方で納得をしながら確認することができるし、こちらも指導はやりやすい。仮に暴走した人がいて誰が注意するの?みんな言いにくいからってほっておく場合が圧倒的多数。そうするとどんどん基準から離反していって、だらしない格好をしているスタッフが多いお店っていう印象になる。だから基準が必要なんだよ。しかし、一方でみんなが本当にセルフチェックが徹底できるのであれば、基準は必要ないと思うよ」という具合です。大体の場合には、このような説明で納得していただくことができます。
実のところ、身嗜みチェックは、「指摘をされる側」はもちろんのこと「指摘をする側」もかなりの気分を害するものなんです。読者の皆様はいかがですか?後藤自身もスタッフへ身嗜みについて伝えるのは、決して気分のよいものではありません。それは、一つの自己表現である身なりについて指摘をするということが、そのスタッフの存在そのものを否定することにも通じる可能性があるからです。身嗜みの基準は、相手の人格を傷つけることなく指導ができる大変便利なツールになるのです。 |