これだけの質問であれば、答えは、大きな声でノー!です。どうしてこのような質問が多発するのかよくわかりません。お辞儀の角度なんて、実際のところは大きな問題ではありません。とはいえ、これだけでは誤解が生じそうなので、説明を加えます。
お辞儀というのは、自分の気持ちを表現する一つの手段です。具体的には、腰を折り、頭を相手に見せるという動作です。頭は人間の弱点の一つで、大事に守られている箇所です。(骨で覆われて髪の毛まで生えていますものね)実はこの“弱み”を見せるという行為には、特別な意味があるのです。大別すると、@感謝の気持ちA陳謝(お詫び)の気持ちB敬意の 3 つになります。大切なことは、これらの気持ちを相手のココロに届くように表現することなのです。角度の違いが重要なのではなく、まず気持ちがあって、次に頭を下げるという行為があるのだということを忘れないでほしいのです。そうすれば、角度にばかりとらわれることはなくなるはずです。
次に、お辞儀の角度についても説明しましょう。角度の違いというのは、自分の気持ちの深さに比例します。(マナーの本を開いた時の、会釈・敬礼・最敬礼と書かれているアレです)チョコンと頭を下げた時の「ありがとう」の気持ちと、深々と頭を下げた時では、感謝の気持ちの度合いは異なってきます。出入口でお客様をお見送りする時のお辞儀は、 45 度(最敬礼)にしましょう!という伝え方では、受講生にあらぬ誤解を抱かせてしまいます。“今日もご来店ありがとうございます。また、来てくださいね”という気持ちの伝わるご挨拶が必要なのです。
その気持ちがココロにあれば、必然的に頭は深く下がるはずなんですね。本誌でもよくお伝えしているのですが、講義をする際、なぜそれをするのかの理由について分かり易く説明することはとても重要です。私の講義では、お辞儀の名称や角度について触れることは、ごくわずかです。
ただ、ホールでのお辞儀には、もう一つ意味があるのです。それは、パフォーマンスとしてのお辞儀です。お客様がお店に足を踏み入れた時に、パッとインパクトを与えるために行なうものです。スタッフ全員がキレイに一礼を行なうことで、“気合を入れて頑張っているお店なんだな”という印象を与えることができるのです。そういう意味においては、形重視のお辞儀も大切ですし、席を離れる際のお辞儀を 30 度にしていますという説明は、十分に納得できるものになります。 |