有限会社 オフィストレイン
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質問の種類を見極める

受講生からの質問の目的は、大別すると 3 つに分類できます。一つ目は、ストレートに自分の疑問点をクリアしたい方。次は、質問をする事柄について自分なりの回答を持ってはいるが、第三者からのお墨付をもらうことで確信や自信を持ちたい方。最後は、研修担当者として講師がふさわしいかどうか試してみようとする方。これは、私の経験則から感じる分類です。

質問を受ける際には、これら隠された目的(本音の部分)に留意することも必要です。質問への対応いかんによって、講義の流れがかわってしまう時もあります。特に3番目の質問は、私よりも年齢が上の役職者からいただくことが多いです。ここで、相手を十分に納得させる対応ができなければ、研修の目的が十分に果たせない場合もあるので、細心の配慮が必要です。

以下は、接客研修でしばしば受ける質疑応答実例です。研修のご参考になれば幸いです。

 お席の後ろで行なう一礼は、 30 度が正しい?

これだけの質問であれば、答えは、大きな声でノー!です。どうしてこのような質問が多発するのかよくわかりません。お辞儀の角度なんて、実際のところは大きな問題ではありません。とはいえ、これだけでは誤解が生じそうなので、説明を加えます。

お辞儀というのは、自分の気持ちを表現する一つの手段です。具体的には、腰を折り、頭を相手に見せるという動作です。頭は人間の弱点の一つで、大事に守られている箇所です。(骨で覆われて髪の毛まで生えていますものね)実はこの“弱み”を見せるという行為には、特別な意味があるのです。大別すると、@感謝の気持ちA陳謝(お詫び)の気持ちB敬意の 3 つになります。大切なことは、これらの気持ちを相手のココロに届くように表現することなのです。角度の違いが重要なのではなく、まず気持ちがあって、次に頭を下げるという行為があるのだということを忘れないでほしいのです。そうすれば、角度にばかりとらわれることはなくなるはずです。

次に、お辞儀の角度についても説明しましょう。角度の違いというのは、自分の気持ちの深さに比例します。(マナーの本を開いた時の、会釈・敬礼・最敬礼と書かれているアレです)チョコンと頭を下げた時の「ありがとう」の気持ちと、深々と頭を下げた時では、感謝の気持ちの度合いは異なってきます。出入口でお客様をお見送りする時のお辞儀は、 45 度(最敬礼)にしましょう!という伝え方では、受講生にあらぬ誤解を抱かせてしまいます。“今日もご来店ありがとうございます。また、来てくださいね”という気持ちの伝わるご挨拶が必要なのです。

その気持ちがココロにあれば、必然的に頭は深く下がるはずなんですね。本誌でもよくお伝えしているのですが、講義をする際、なぜそれをするのかの理由について分かり易く説明することはとても重要です。私の講義では、お辞儀の名称や角度について触れることは、ごくわずかです。

ただ、ホールでのお辞儀には、もう一つ意味があるのです。それは、パフォーマンスとしてのお辞儀です。お客様がお店に足を踏み入れた時に、パッとインパクトを与えるために行なうものです。スタッフ全員がキレイに一礼を行なうことで、“気合を入れて頑張っているお店なんだな”という印象を与えることができるのです。そういう意味においては、形重視のお辞儀も大切ですし、席を離れる際のお辞儀を 30 度にしていますという説明は、十分に納得できるものになります。

 ホールは走ってはいけない?

こちらも答えは、ノーです。走る必要があれば、急いで駆けつけてください。“スピード”も大切なサービスの要素の一つです。皆さんがお客様だったらいかがですか?ランプを付けて待っているにもかかわらず、のんびりと歩いてコースに入ってきたスタッフが視界に入ったとしたら!“はやく来いよ!”って(少し乱暴な表現でスイマセン)思うはずです。ただし、“走り方”については、細心の注意が必要です。

忙しいという字は、“ココロがなくなる”という意味があります。赤ランプ以外は、周囲のモノが全く目に入らないというような状況に陥ってしまうのであれば、走ることは得策ではありません。床に積んでいる箱を蹴って玉をバラ撒いたり、熱いコーヒーを持っているお客様とぶつかったりなど、その後に待っている光景は悲惨なものがあります。要するに周囲の様子を気に掛けつつ、お客様の席にはできる限り急いで駆けつけることが望まれます。また、コース内が狭くて走りにくい場合においても、のんびりさんは禁物です。お客様から自分の姿が見えるところにきた時には、“急ぐポーズ”をとることは、忘れないでください。
  特殊景品の誤差を無くすには?

特殊景品を手渡しされている店舗において、よく受ける質問です。間違いのないよう正確にお渡しするためには“1度の交換業務で3回の確認作業”をしっかり行なうことが最善の方法です。この際、“目”と“言葉”そして“手”を使った確認をすることがポイントです。1回目は、セルフチェックです。特殊景品を取り出して手に乗せた時に、目と手を使ってご自身で確認します。次にお客様と一緒に確認します。この時、景品を見せながら大きな声で数を言います。手を添えながら「大が○本、小が○本になります」と発声します。ポスの表示を手で指し示しながらおこなうのもよいです。この時せっかちなお客様は、景品をもぎ取っていこうとされるのですが、必ず一緒に確認していただくようにしましょう。ポイントは、最初に「お確かめください」の言葉を届けることです。ちなみに私は特殊景品を自分の方に近づけて、お客様がすぐに取りにくいように工夫をしていました。最後は、手渡す瞬間に、再度“目”で確認します。以上の確認作業が徹底されれば、景品を正確に渡すことができるようになります。

 お客様から両替の依頼を受けた時には、断るのが正しい?

車椅子でご遊技されているお客様から「1万円札を両替してきてほしい」と依頼されたらどうしますか?最後に、研修で私が受講生に対して行なう質疑応答例をご紹介致します。もちろん答えは「 YES 」と思いきや、過半数以上の方が「 NO 」とこたえてしまうのです。「どうして両替して差し上げないの?」と尋ねると、「だって、お客様からお金は絶対に預かってはいけないと言われているので……えっ?両替してもいいんですか?」と逆に質問される始末です。これには、私も絶句でした。お客様から両替依頼を受けてはならないことをルールにしている店舗は少なくありませんが、ケースバイケースで対応してほしいものです。この質問についての答えは、大きな声で「 YES 」です。

金銭の取扱いには十分すぎるほどの注意が必要ですが、ここではやはり両替をすべきです。もし皆さんが逆の立場で、両替を断られたらどのように感じますか?本ケースにおいては、お客様から求められている手助けを拒否する理由は、全くありません。“ルールだから”の一点張りで対応してしまうと、本質を見失ってしまうことになります。さて、皆さんの店舗は大丈夫でしょうか?

 
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